第38章 戦勝し戴天に近づく
肉と骨の隙間を巧みに縫って、切れてゆく感覚は一種の快感と化する。
生きる為に、守る為に闘い、刀を振るう
その信念は 頭の隅に追いやられ、
人を斬り、敵が死ぬことで己が生きていると実感し、悦びを得る。
思考と身体を支配するのは歓喜。
今この時と、女を抱いている時とは同じだ。
己の本能に忠実に、求めるまま、
生きていると感じるまま、同じ快楽を体感していた。
両手で刀を握り構え、歩兵の槍刀を撥ね返しては斬り、斬っては躱し、
気付けば、あっという間に、敵兵は残り僅かとなっていた。
「ふっ…はっははは…っっ、これっぽっちかよ⁉︎
足りねぇなぁ、もっと愉しませてくれよっ!」
独りで50は斬っただろう政宗は、
冴え冴えと輝く刀から血露を滴らせながら、
邪神の様な笑顔でまだ足りないと吠える。