第38章 戦勝し戴天に近づく
信長の真剣な眼差しが瑠璃を捉える。
「私の意見など……」
碁盤からは顔を上げないままに言葉を紡ぐ瑠璃に対し、
信長は右手でジャラジャラと碁石を弄びながら、ほくそ笑んでいる。
「見え透いた謙遜などよせ。
光秀に水運権を押さえろと、教えたのは貴様ではないか」
断言される。
(やっぱり、気付いていらしたのね)
ようやく碁盤から顔を上げると
信長を見て うふふふっ と
口元を隠して瑠璃もそっと笑う。
その笑いを見て信長も、クククッと含み笑いを溢す。
パチッ
「船は整った。どう使うか早く申せ」
緋い瞳が狂凶と瑠璃を貫いた。