第36章 戦雷落ち 戦命霧散
「囲まれてるぞぉー」
石山砦は既に退路を断たれていた。
湖面は小舟に乗った明智軍に隙間なく埋められている。
援軍はない。
逃場も無し。
半日足らずで石山砦は白旗をあげ、砕城された。
クククッ…
「俺の参謀はなんと優秀なことか…」
傷つき命を落とした兵士に哀悼の言葉は疎か、
眼も向ける事なく、戦慄と笑って破壊される砦を見ながら、
安土城に飾られている、高価な白磁のような女の笑顔を想い描きながら。
そう呟いて、その場から静かに姿を消した光秀は、
その3日後、もう一つの水上砦 今堅田城を
音も無く静かに包囲していた。