第6章 帰城後から帰城に
琴の調べはまた優雅な音色に戻っていた。
「抽象的だが正解と言っておいてやろう。
新しい品物だ。
未知の物を見、想像するのは常に楽しい」
「しかし、お前はこの銃を知っていたな。
構造はどうなってる。
弾はどうやって作られる。
威力はどうだ?
知ってるなら教えろ」
笑みを絶やさず、光秀は瑠璃に詰める。
光秀の詰問にさすがに手を止めた瑠璃が、
こちらも笑みを絶やさず答える。
「光秀様、
それは頼む態度ではなく、尋問と命令です」
「おや、そうだったか?
癖だ、許せ」
瑠璃は光秀を睨む。
「…………」
瑠璃は答えない。
光秀が言い直すまで言わない気だ。
「……わかった、わかった。
知っている事を教えてくれないか?」
光秀のお願いに、相貌を崩してしてやったり顏で笑う。
「構造はわかりません…
ですが、
その撃鉄(げいてつ)を引き、引き金を弾けば撃てます。弾は火薬と弾頭が一体なのです。今のこの国で作れる技術があるかどうか…
遠射を目的とした火縄銃とは違いますので、
連射は可能ですが、至近距離でなければ意味がありません。
銃が小さいので持ち運びは便利ですが、
殺傷能力は思うほど高くないようです。
私がわかるのはこれくらいです」
すらすらと披露される知識に、光秀は感嘆し舌を巻く。
が、それとともに、疑念が沸く。
武士でもない公家の、それも女が何故、
なんのために武器の知識を持っているのか。
瑠璃に対して初めて畏怖を感じた。
「お前は何処でその知識を手に入れている」
「テレー……本ですかね…?」
「本……書物か…。
お前も三成と同じ書物の虫か」
「みつなり……?」
(まさか、ね……)
2人が銃を見ながら頭を突き合わせて話をしている所を、政宗が少し離れた渡から見ていた。