第35章 休息労癒(R18)
戦や闘いの度、自分は心を失くすのだ と
言いたいのだろうか。
そう思えば瑠璃の心が痛む。
けれど、何も解らない、気付かないふり で答える。
(山月記 の事かな?)
「えっと、確か…『人虎伝』の事ですか?」
瑠璃も記憶を手繰り寄せる。
学生の時、教科書にあった。
「山月記」元になっているのは、中国 唐代に書かれた『人虎伝』。
病に罹り発狂し、山中へ走り入った男は、
次第に人だった姿は虎のような獣に変わり、
行き通る人を次々に喰らった。
時々、人の心を取り戻し、後悔し懺悔、哀悼しては泣く。
けれど、またすぐに獣となり、人の心を失くし、人を喰らう。
人の心を保っていられる時間はどんどん短くなってゆく。
ある日、山の『人喰い獣』を退治しに来たのは、
高官時代の旧友。
その旧友に、身の上話をし、
見逃し、もう探さないでくれ…とまた山へ分け入って行く。
人であった獣の話。