第35章 休息労癒(R18)
その拍子、琴爪が弦にかかり、ジャラーーンと
不律音を鳴らす。
それは、今抱えている俺の乱心 と、これから起こる不承事を告げているようだった。
「そんなもん用意しなくても、お前が居て、
お前の全てで慰めてくれりゃぁ良いんだよ。
俺の一番の好物はお前だからな」
瑠璃を後ろから抱き締め、首筋に顔を埋める。
瑠璃がそっと俺の手を上から包み込んでくれた。
柔らかい身体から伝わる体温を、
目を閉じて感じていれば、刺々しく、
尖った気や、酸呻※(さんしん)な気持ちが、
幾分か落ち着く気がした。
けれど、それは気の迷いか、錯覚、錯慮※(さくりょ)だった。
こんなもんで、昂った感情が治るはずがない。
(それどころか……叩きぶつけたく、なるーー)
※酸呻…悲しみ呻く。
※錯慮…間違った考え。