第35章 休息労癒(R18)
鎧を脱いで、その重さから解放されれば、
ほんの少しだけ肩の荷が降りた気になる。
湯浴みをし、土埃と汗と汚れを流せば、
また少しだけ感奮が落ち着いて思える。
この度の出陣は移動が多く、思ったより斬り合い、殺し合いは少なかったが、それでも、そこは戦だ。
何人も何十人も斬った。
その陰惨とした気分はなかなか消す事が出来ない。
爛々とし鋭悍(えいかん)と昂った精神神経だけは凪いでゆかない。
凌陰※としたまま、瑠璃を探そうとした矢先、
政宗を呼び寄せるかのように、琴韻が流れて来た。
音を辿って行き着いたのは、泉殿。
瑠璃の居場所である、池に架かった
渡殿を渡った先、敷地の端。
池に臨んで建てられている 涼を取ったり、
月見をしたりする小殿。
現代で簡単に言えば 離れ といった処だ。
玲瓏※(れいろう)とした琴の音色が響いてくる。
※凌陰…ゾッとするような寒々とした暗さ。
※玲瓏…金属や玉が触れ合って鳴る美しい音