第35章 休息労癒(R18)
一方、御殿に戻った政宗。
「お帰りなさいませ、政宗様」
屋敷仕えの者が揃って政宗を出迎える。
が、瑠璃は居ない。
「瑠璃はどうした。居ないのか?」
「は、はい…い、いえっ、お、お城から帰っていらっしゃって……御殿の、ど、何処かには 、い、いらっしゃるようなのですが…」
政宗は咎めたのではなかったのだが、
女中が怯えながら、しどろもどろに答える。
「も、も、申し訳、ありませんっ」
「そうか、分かった」
答えた女中を見つめながら、短く、それだけ言うと、玄関を上がっていった。
普通に見える政宗だったが、震えが来るほど、
険躁※鬱勃※(けんそううつぼつ)としながら、
刻削※刃傷※(こくさくじんしょう)の気を全身に纏っていた。
※険躁…心が険しく騒がしい。平静でない。
※鬱勃…生気や意気込みが盛んな様。
※刻削…不人情で酷しい、惨い事をする。
※刃傷…やいば で人を傷付ける。