第34章 戦雲立ち 戦火拡大
「憎まれ役なんて、損な役回りですよ…信長様……」
哀声(悲しげな声)を空へと放つ。
「……魔王でも、鬼でもないのにな」
少し大きな独り言。
瑠璃の背後に立つ美弥には聞こえていた。
それは、美弥が居ることに気付いていて、
瑠璃が、聞こえるように言ったのかどうかは判らないけれど。
「魔王でも鬼でもないと思う?」
美弥は瑠璃に問いかける。
振り返った瑠璃が、真っ直ぐ、強く、まるで美弥を非難するかの様な、鋭い眼で見る。
「美弥さんは、魔王や鬼が自分より下の弱い者を思いやると思いますか」
綺麗な声は柔らかで有りながら、厳かに重く響く。
「…思いません……」
「信長様は優しいですか?」
「優しいです」
瑠璃が怖いわけではないのに、美弥は声が震える。