第6章 帰城後から帰城に
目が覚めて、ただ、政宗に謝ろうと思って、
深く考えないで
痛む身体を押して部屋まで来た。
入った途端、部屋の、政宗、の雰囲気が違う事に気付いた。
私を見て「何で来たんだ…」と、愕然としたように呟いた事にもなんとなく納得がいった。
何かに耐えるような。
寂しく澱んだような。
噛みつきそうに剣呑としていながら、
陰々滅々としている。
そんな政宗を初めて見た。
あぁ、この人も、哀しんでいるんだ
殺したくはないんだ…と感じた。
(人を殺して平気な人なんていない……)
可哀想で、悲しくて、
そして、嬉しかった。
だから、伝えておきたかった。
この時代の人が戦をなぜするのか、
命を賭けて闘い、
命を守る為殺し合う。
生きるか死ぬかそれはいつも背中合わせ。
頭では解っていた。
解っているつもりだった。
実際、この時代が生温くはなかったことも、
改めて思い知らされた。
だから戦わないで、殺さないで、とは言えない。
でも、せめて……
『殺して欲しくは無い』と
そう、願っていると……。
覗いた蒼い瞳はいつもみたいに澄んではいなかった。
殺す事も否めない、平気だと言ってみても
心は軋んで歪な感情を作る。
それをひた隠しにしていても、
本当は貴方の心が傷(いた)み泣いているからだって
伝えたかった。
「瑠璃……
ありがとな。
お前が泣いたから、俺は大丈夫だ」
私が人を殺したと泣き喚いたとき、
『俺が殺した』と言って庇ってくれた。
違う。
心を救おうとしてくれた。
だから
私が泣いて、貴方が少しでも楽になるなら、
涙が枯れるまで、私が泣くよ。
(もし、今度泣きたい事があったら私を呼んで。
私が泣くから)
貴方に会いにきて正解だったみたい。
そうでしょう?政宗?
少し、政宗の深い部分を見た気がした瑠璃だった。