第34章 戦雲立ち 戦火拡大
大名達は力で、戦で、勝てば、従わせる事が可能だが、寺社勢力はそう簡単にはいかなかった。
だから、信長はこれまでも、再三に渡る忠告を聞き入れなかった寺社を、焼き討って来たのだった。
「無差別に攻撃しているわけではありません。
警告、開門に応じなかった寺社を主にしていますので……」
三成もそれ以上、美弥を諭す言葉や説明がなかった。
明快としない雰囲気が漂う。
「信長様は……あえて、寺社と対峙し、自ら憎まれ役を買って出ていらっしゃるのかも、しれませんね……。
上に立つ者には必ず敵がいるものです」
瑠璃は、寂しそうな声でそう言うと、
小さく頭を下げて、その場を離れた。
「瑠璃さんは、何を知っているのかな…」
行ってしまった瑠璃の背中を見送り、
美弥の気持ちが瑠璃に移る。
(誰かに憎まれても、誤解されても…貴女は…)
静厳な背中に哀愁を負って感じた瑠璃の背中に、
三成の菫色の瞳が哀憫(あいびん)の色を示した。