第34章 戦雲立ち 戦火拡大
ー姫のそれぞれー
「百済寺を焼き払った信長様の小隊は、
此方に向かっているそうです。
織田軍の損害はほとんどありません」
三成が美弥と瑠璃に近況を報告する。
「そうですか、被害が少なくて何よりです」
瑠璃は抑揚のない平坦な声音で、それだけを述べた。
(政宗も無事なんだ、良かった)
そう思うと、頬が緩みそうになって、気持ちを引き締めた。
けれど、美弥は、
「信長様はどうしてそんなに、次々に寺社を焼くの……」
泣きそうな顔。
「美弥さん、それは……」
信長の目指す、争いの無い平和な世を作る邪魔をするから。
信長の志しの行く手を阻む勢力だからだ。
…だとは、心優しい美弥には言えず口を噤む瑠璃。
直球では辛辣過ぎて、傷つけてしまうかもしれない、と思った。