第34章 戦雲立ち 戦火拡大
鯰江城(なまずえじょう) 近くに築いた砦の中で、
信長は安土城からの文に目を通していた。
「家康退却に伴い、秀吉が援軍を率いて出立したそうだ」
「家康が退いた?」
政宗が驚く。
「兵力の差だ。武田は4万だそうだ」
「2倍か……」
政宗も眉間に皺で考え込んでしまった。
(許せ 家康。割いてやれる兵が少なかった)
幾つも勃発する戦に、織田軍は一ヶ所に大兵を送り込めない状況だ。
それに比べ武田軍は、徳川領より圧倒的に広い領土を持ち、進軍途中に兵数が増えたのだった。
「信玄が出てくるなら、俺もそっちに行きたかったぜ」
童子のようだ。
「この度、家康は防衛が目的だ。
行ってもお前の出番は無いだろうな。
俺と此処にいれば、そのうち、存分に刀を振るわせてやる」
信長が、燭台の上で文を焼きながら、楽しそうに笑った。
その数日後。
百済寺が、鯰江城を裏から支援していると言う情報から、信長は寺を放火し、焼き払ってしまった。