第34章 戦雲立ち 戦火拡大
不安を少し見せる姿も愛おしく思う。
「分かった。ちゃんと帰って来て聞くから、
良い子で待ってろよ」
背けられている顔を両手で挟み、自分の方に向けさせれば、不安で心配気な銀鼠色の瞳に、自分が映った。
「大丈夫だ。
お前が笑って送り出してくれないと、
俺は出立出来ない。ほらっ」
「……キス、してくれたら、笑う」
「なんだ、願ったり叶ったりだぜ」
チュッチュッ
「…ん…」
瑠璃を見つめて、優しく甘く政宗の唇が弧を描く。
蒼い瞳が剛柔として瑠璃を奮い立たせる。
「政宗、待ってますね」
力強く言って、覚悟を恩好とした笑みに変えて、笑いかけると、ぎゅぅぅっと抱きついた。
「帰ったら、もっと抱き締めてやるな」
童女のように自分の腰に腕を回して抱きついて来た瑠璃に、囁いた。
(良い子で待ってろ)