第6章 帰城後から帰城に
今、苛立ちはない。
平和な姫で経験したから、ではない。
女の声でキャンキャンと抗議するのではなく、瑠璃が
静かに泣いて言葉を紡ぐからだ。
政宗は瑠璃の頭を撫でながら、強く揺るぎない声で言う。
「生きる為だ。
この世は生きるか死ぬか、
殺すか殺されるかだ。
俺の命を、俺の大切な者達の命を脅かす者が在るなら、俺はそれを全て排除する」
守る為に。
生きる為に。
揺るがない。
これだけは、譲れない。
(理解してくれ…瑠璃。
お前の心を傷付けたくない…)
願う。
人殺しだと罵られたとしても、
拒絶されたくない。
だから、理解してほしいと
祈る思い。
政宗の言葉に、バッと顔をあげた瑠璃は、
黙って政宗の蒼い瞳を覗いたかと思うと、
悲壮な声を上げた。
「知ってる!解ってる!
でも、殺して欲しくはありませんっ!」
政宗の手に重ねた掌に力を込める。
「だって、だって…政宗。
泣いてます……
哀しくて傷(いた)いって顔してる!
政宗が、そんな顔するなら、殺して欲しくは無いんです……」
真っ直ぐな目が政宗を射抜く様に見つめながら、涙を流している。
(俺が泣いてるって……
俺の為に殺すなって言うのか…)
もちろん戦うことに抵抗も戸惑いもないけれど、
戦いに明け暮れ、殺さなけれならない状況にあって、色々な感情を凍らせても、
そこは人間…
いつも、
死に逝く者を憐れみ、悼み、
命を尊び、弔う。
罪の意識と哀しみに襲われる。
どんなに哀惜し、悔恨したとしても…