第34章 戦雲立ち 戦火拡大
「お前の体力が尽きても俺は知らん」
そう言って、今度はいつもの人の悪い笑みを見せた。
「‼︎ 光秀様ったら!」
顔を赤くした瑠璃が諫める声を上げるが、
すぐに憂い顔になる。
けれど、努めて、儚くではあるが、笑って送り出す。
「光秀様、気を付けて」
狐につままれたような顔で、光秀が見る。
「ちゃんと、帰って来て下さいね」
「フッ……それは、分からない事だな。良い子で居ろよ」
「光秀様のイケズ‼︎」
歩き出してしまった光秀の背中に精一杯、
大きな声で投げ掛けた。
(俺を心配するのか……そうだな、帰って来るまで、ずっと 俺の事を考え、気を揉んでいれば良い。
死んでも、お前の心に居座り続けてやろう)
ククッ っと、独り笑った光秀がどんな表情をしているかは、誰も知らない。
本人でさえも。