第33章 春花酒宴
「素直で純粋で、眩しい…」
惜惚※(せきこつ)とした眼差しで、美弥と三成を見ている瑠璃に家康は言葉を失った。
(俺の心を代弁したのかと思ったけど…
…君も……)
瑠璃の淡麗な横顔が自分の横顔に見える。
平静と冷涼とし、全てを心の底に押し込めて、
強くなろうと生きて来た。
でも、寂しくて、虚しくて。
輝くものに、憧れ、心奪われる。
(…君が、俺の態度を恐れなかったのは……)
「同じだからか?」
「え?」
溢れ出ていた家康の心の声に、瑠璃は家康の方を見た。
「何でもない」
「?」
家康の翠色の瞳が気のせいか、柔らかく笑ったように見えた。
こうして宴労と言う名の 花宴が幕を開けたのであった。
※惜惚…哀れみ、いたみながらも心を奪われ、ぼんやりする。