第32章 女神敬仰
ー秀吉の見立てー
信長に従うように言葉を納め、頭を下げた
秀吉だったが、まだ瑠璃の事をどう思って良いのか悩んでいた。
信長様を前にしても、微動たりともしなかった。
信長様の剣呑としつつも威圧的な気に触れても、
優雅な笑顔で受答し、俺たちがいるにも関わらず、諾否し、挑動※してきた。
自分の身分を証明する為、半裸になっても、
動揺は疎か、羞恥心も憂哀も、何ひとつ
見せなかった拝賀の日。
女を隠し男と偽り小姓として過ごす城内では、
陰口悪口を毎日耳にし、危険な目に会っても、
平然とし毅然として競技会で見せた、弓と馬術の能力。
妨害しようとして来た者には、周囲を凍えさせる程の気で牽制し、鬼気を纏い、ゾッとする狂楽の微笑みを浮かべた日の事。
※挑動…挑んで人の心を興奮させる。