第32章 女神敬仰
まさか、自分達が嘲り罵り、面白おかしく
いびっていたと思っていた小姓が、
女でありながら弓馬術に秀で、大差で
男共に勝ち、なおかつ、君主に目を
掛けられていたとは、露ほどにも、思っていなかったであろう。
皆、青ざめ、肝を冷しながら、俺の言葉、
或は、瑠璃の言葉を待っているだろう。
騒(ざわ)めきもしない。
震え怯えているのだろう。
「…瑠璃。下で尻尾を巻いて怯えている
負け犬共に、何か言ってやるが良い」
言葉の確認を取るように、俺をじっ と見つめてくるので、頷いてやれば、一歩前へと進み出る。
(何と言う?)
「腐鼠※(ふそ)脆怯※(ぜいきょう)にして
頭(こうべ)を垂れよ。
言葉は人格の表れと思いなさい。
改過自新※を求めます」
悠涼とした声が響き、それだけ言うと、
俺の側に退ってくる。