第30章 花顔涙咲
誰もが好む、美しく優柔な笑顔を見せていながらも、閉じたままの心。
見守る菩薩の様な温かい笑みなのに、
それは、誰も寄せ付けない為のモノだという事は、政宗だけが知っている。
質問され答えを求められれば、当たり障りなく、
利口に受け答えをし、時折、相手が相貌を崩し、
笑いを誘う答えをする。
計算された会話。
同じ空間に居て、側に座っている、物質的距離は近いのに、見えない心の距離は、まだまだ離れて遠い。
近くて遠い距離。
(美弥と秀吉がいるから、対応に気を付けてるんだろうけどな)
何も知らない美弥と秀吉は、何の気なしに、
質問したり、笑い掛けてたりしている。
(ちょっと、気の毒だな…)
政宗は眉を下げた。