第30章 花顔涙咲
「あの者達だけてなく、まだ他にも玉瑛に対して
同じ考えのヤツらが居るはずです」
懸念し一抹の不安を覗かせる政宗。
「…面白がるのも此処までだな。
姿を偽って城に上がるのは潮時だ。
ヤツは『自分の蒔いた種だ』と言っておったが、
それでも身の危険を冒してまで、そうする必要のない事だ」
これ以上は直接的危険が見えるし、
瑠璃の為に軍の内輪を乱す必要も無い。
「正体を明らかにし、今迄のように連れて歩けばよかろう」
信長はなんのことは無く言う。
「貴様は、独り御殿で退屈に過す瑠璃の事を考えて、男の格好で連れて来たのがひとつ」
「………」
政宗は黙って信長の言葉を聞いている。
「手元に置いておけば、守れるのがひとつ。
しかし、一番は、瑠璃を他の者に見せたくなかったからであろう」
目を丸くした政宗に、ニヤリと笑って、付け加える。