第30章 花顔涙咲
「瑠璃さん、今日は…」
美弥が言葉を濁す。
「どうぞ、何でも仰って下さい、美弥様」
「…優しい感じ。着物の色のせいかな」
瑠璃の穏やかな口調に押され、美弥が続ける。
「拝賀の日はとっても綺麗で素敵だった!
でも、近寄り難いって言うか…
頭も良いし、礼儀作法も完璧で、私と違って冷静でっ……」
(必死だなぁ)
うふふふ と笑う瑠璃。
「美弥様、全部言わなくても解りました。
初めて信長様にお目にかかる日で、緊張もしていました。
政宗がくれた美しい着物を着ていれば、
それに似合うようにしなければ…と、
私も精一杯頑張っていたんですよ」
言い訳を並べると、美弥がホッとしたように笑顔を見せた。
美弥は、瑠璃が自分に対して助け舟を出してくれたとは気づいていなかった。
「瑠璃さん、私のことは呼び捨てでいいよ。
居候の姫だけど仲良くしてくれるかな?」
お互い、恐る恐る歩み寄る。
「コチラこそ、仲良くして下さいね、美弥さん」
「もちろんだよ!」
笑い合えた。