第30章 花顔涙咲
(信長様が特訓をいつ見ていたかと言うより、瑠璃はいつ、どうして、その事に気付いたんだ)
政宗は自分の横で、鋭麗に信長をみている瑠璃を神妙に見つめる。
(全部知ってるのに、時々、知らない女みたいだ)
小さく息を吐いた政宗。
「たまたま、美しい天主をみあげたら、
廻縁に人の姿があっただけですよ、政宗」
瑠璃が声を小さくして、申し訳なさそうな声音で言い訳をしてきた。
先を読んで話をするクセに、
平然と冷めた顔で棘のある言葉を吐くクセに、
いつも、顔色を伺いながら、心を痛めている。
「俺はまだまだ、お前を知る必要があるな」
政宗は、クククと笑った。