第30章 花顔涙咲
(男だと思ってたヤツが女だと判ったら、
どうするかなんて、決まってるっ)
何事もなかったから良かったが、もし、
何かあっていたら、後悔では済まなかっただろう。
(なんで、あの時、一緒に帰ってやろうと思わなかったのか……)
抱き締める。
「悪かったな…心細かっただろう、怖かっただろう」
胸に抱いて顔を見ないまま謝れば、
「…政宗…そんな…たら…化粧、落ち、ちゃいます…よ…」
涙声で必死に誤魔化そうとして、震える声で言葉を紡ぐ。
そんな処も愛らしい。
「何事もなく、無事でいてくれて、ありがとうな」
顎を掬い上げると、口付ける。
(コイツがあまりにも出来るから、
安心しすぎてたのかもな)