第30章 花顔涙咲
歩きながら話を続ける。
「光秀の言葉だけで警戒し憂慮する事が出来るなんて、何者だ と思ったのは確かだ。
それに、そう思った と言う事を見抜かれていたのも、驚いた。
でも、それ位、機転が利いて、危険回避能力が高い女で良かったと思った。
心底、そう思った」
(お陰で、何事もなかった)
そこまで話すと、立ち止まり、
まだ弱々しい銀鼠色の瞳を覗き込む。
「そのまま門を出て、大勢の男達に
囲まれていたら…と思うと、お前の行動には
本当に礼を言いたくなる」
考えただけてゾッとする。
考えたくもない最悪の事。