第30章 花顔涙咲
呆気に取られた顔で俺を見上げる瑠璃。
(ほら、そんな 人間らしい顔をする)
くくくっっ と笑うと一歩 間を詰めながら
「表面しか見てないヤツらと一緒にすんじゃねぇよ」
耳元に顔を寄せると、色めいた声を吹き込む。
「心だけじゃない。
身体の奥の奥まで知ってる。
……俺の、口付けひとつで、正体を無くすって事も、な」
チュッと額に口付けてやれば、瑠璃は慌てて額を手で押さえ、耳まで真っ赤になった。
「ほーらな、意外と隙だらけだし、こんなに女らしくて、可愛い」
(本当、可愛い。それを俺だけが知ってる)
俺は照れている瑠璃の手を取ると、
上機嫌で再び歩き出す。