第30章 花顔涙咲
瑠璃の背中。
どんなに美しく弱さを取り繕い、凛として
完璧に見せても、後ろ姿はただの女だと思う。
辛そうに吐き出す言葉も、俺には、今更、
「何を言ってるんだ」位にしか思わない。
フッっと笑みが零れる。
「頭が良くて、隙のない女だと思うし……
まあまあ、人を小馬鹿にして楽しんでいる節があるのも否定しない。
でも、な……」
肩に手を掛け、こちらに向けると瑠璃の左胸を、
人差し指でで押す。
「ここ、奥の奥までもう知ってる。
お前の正体なんて、全部知ってんだ。
今更、変わるわけないだろう」
何でもない事を怖がる瑠璃。
態度よりはるかに多情多恨。
今まで、傷つき心を痛めて生きてきた証拠だ。