第30章 花顔涙咲
「競技会の日、催しの参加者が大勢、
門の外にたむろしていましてね。
女性が独りで通るには危ない雰囲気でしたので、
お気をつけて、とお話したんですよ」
ニコニコと話す門番。
あえて、柔和な表情でそっぽを向いている瑠璃。
それを咎めるように見つめる政宗。
「そうか…そいつら、何で帰らなかったんだろうな」
「随分、長い間、誰かが出てくるのを待っているようでしたが、結局 出て来なかったようで、文句を言いながら帰って行きましたよ」
「ふーん、そんな事があったんだな、分かった。ありがとうな」
「あ、いえ…?」
門番は呆気にとられている。
門番の肩をポンと叩くと、政宗がさっさと歩き出したので、瑠璃も、門番に会釈をして後に続いた。
門を潜り抜け、歩きながら話を再開する政宗。
「瑠璃……あの日、瑠璃の姿で帰ったのか」
静かな声。