第30章 花顔涙咲
黒金門で門番と挨拶を交わす。
「おはようございます。政宗様、瑠璃様」
「おう、ご苦労さん」
政宗がさらりと言って、過ぎようとすると、
門番は瑠璃に話しかける。
「競技会の日は、何事も無く、お帰りになりましたか?」
(何事もなく?)
政宗は訝しむ。
「ええ、ありがとうございます。少し急いで無事帰りました」
政宗が目を眇めて、聞いているのには気付かず、
静々と頭を下げている瑠璃。
「何のことだ」
政宗は低い声で、門番にでもなく、瑠璃にでもなく問う。
なぜなら…
「………」
瑠璃は答えない、からだ。