第30章 花顔涙咲
「一緒に笑ったり怒ったり、驚いたり、
正臣兄様はいろんな事をして、いつも私を
元気にしてくれたんですよ」
瑠璃が家族の事を楽しそうに話すのを、初めて見た。
厳しい家に居て、それでも楽しい事があったんだと言うことに、胸の痞えが取れる。
「今は正臣兄様が居なくても、政宗が私の欲しいものを全部くれて、元気にしてくれるから。政宗が居れば幸せです」
はにかんで政宗に笑いかけて、
しゃがんでいた瑠璃が立ち上がる。
「政宗…ありがとうございます」
頬を染めて眉を下げてちょっと潤んだ瞳で言うと、
背伸びをし、不意打ちの口付けを、
政宗の頬にチュッと贈る。
「…なっ…っ」
照れる瑠璃が政宗にも伝染する。
沈丁花の香りは甘い恋の香り。
大好きな人を想い出す香り。
昔も今も……。
『沈丁花 春訪れて 懐かしく
蘇るのは 幼き愛情』 瑠璃