第30章 花顔涙咲
でも、俺は知っている。
美しいのは外側だけだと。
蠱惑的な銀鼠色の瞳は知性を湛え、
博識にして高い教養で武装し、
口から発せられるのは、上手に褒めながらも、
人を嘲る棘を隠した美辞麗句。
言葉を操りながら人を操るように、
自分の心も操り隠し、煙に巻く。
ハッキリ言って、美しくない。
醜い心。
欠けているのは、心の奥。
本来、基本は純粋で真っ直ぐなのだが、単純ではない心。
傷つき、哀しみ、寂しく、複雑に出来てる。
醜悪なのに、清らかに見え惹かれ、
魅了されるから、この女は不思議だ。