第4章 光秀逗留
戦場で独り、矢を射れる若い女がいるか?
どれ程、心を痛めたか…
殺したのは俺だ。
全員の息の根を止めたのも俺だ。
でも、瑠璃は自分が殺した と言って泣いた。
当たり前っちゃぁ、当たり前だな。
戦場で多くの人が死んでた。
死に損なって呻いていた。
そんな非日常で凄惨な光景を見て、
ただの女が平常心で居られる訳ない。」
政宗は話ながら、改めてあの時の瑠璃の
心情を考える。
どれ程、怖かっただろう。
まして、瑠璃は戦のない平和な500年後の
日ノ本から来たのだ。
目にした瞬間、気を失っても可笑しくない状況で、
政宗を救う為に矢を放った。
政宗の疲弊した心が、涙を流す美しい瑠璃の姿を見た時
癒された様な気がした。
(俺は救われた気持ちしかなかった。
でも、あの時、
お前は、地獄の心境だったんだな……
瑠璃……)
黙って話を聞いていた光秀が、
「成る程。
それで、今日、俺が刀を抜き、怪我をした
奴等をみて、思い出したって事か。
だが、
瑠璃の中から戦場の記憶が消える事は
無いだろう。
どう、乗り越えて行くかだ。」
「あぁ、分かってる。」
「なら、そんな
辛そうな顔をするな、政宗。」
ポンと肩に手を置いてから、光秀は部屋を
出て行った。