第4章 光秀逗留
政宗は暫し、思案して口を開いた。
「俺を……
俺を、戦場で助けた時の事を思い出したんだろう。
気をやる理由はそれしか思いつかん」
「どう言う事だ?」
光秀も、信長も女が政宗を助けたと
言う事は知っていても、どう言う状況だったかまでは知らない。
「……敵将の首は取った。
その時、右肩を負傷した。
手負いのまま、俺は独り相馬の兵に囲まれていた。
俺の戦況は不利だった。
其処に、矢が飛んで来て、相馬の兵の1人を貫いた。
驚いたのは、相馬の奴等だ、
その一瞬の動揺に乗じて、斬り込んだ。
矢は、俺を援護して何度か飛んで来んだ。
援軍が来たか、退却させたはずのこっちの味方の兵が残ってたのかと思った。
俺は相馬の兵を斬りながら、矢の飛んで来た方を垣間見た。
その衝撃ちゃぁ……。
あの状況でなきゃ、刀を振るうのも
忘れる程だったぜ。
焼野の戦場の中で、女が、弓を構えてたんだ…」
戦場で瑠璃を見た時の光景を思い出しながら、政宗は続ける。
「真っ直ぐに弓を構え……
弦を引きながら泣いてた。
一発目の矢は敵の致命傷になってた。
その次からは在るだけの矢を乱打した
感じだった。