第29章 慈愛の時間(R18)
この時代、馬は足代わりで、戦などで愛馬を失う事は茶飯事だったため、それほど馬に感情移入しない。
瑠璃は女で現代人、馬を失う事に慣れていないのだ。
(俺たちとは違う…)
車か物のように壊れたり、失ったりしたからと言って、ハイ次 と考えられない。
馬を失ったのは初めてだ。
しかも、崖から馬だけが落下。
それはそれで衝撃的な失い方だ。
「考えるな」
そう言っても、鼻を啜りながら、首を横に振る瑠璃。
(だよな……)
「だったら、考えられなくしてやるから、もう考えるな」
瑠璃は顔を覆って泣いている。
政宗はそんな瑠璃に慈情の瞳を向けた。