第29章 慈愛の時間(R18)
ちゅっ、ちゅっ
抱き締めて、瑠璃の首筋から肩にかけて口付ける。
「お前の体温を感じたい。
お前が生きてて良かった」
ジャバッッ
水が揺れ飛沫く音がして、瑠璃が両手で顔を覆う。
(私は生きてるけど……)
小さく震えている。
後ろから抱き締める。
「泣くな」
「ふぇ……ぅぅ…えーーん…星羅ぁ〜…」
泣くなと慰められて、余計 哀しくなったのか、
声を上げて瑠璃が泣く。
青葉城に居た時与えた馬「遥」は、安土への途中、
小田原で手放してしまった。
替わりに桑名で選び、一緒に安土まで旅して来た馬が「星羅」だった。
薄墨毛でありながら、鼻に星型の白い模様が綺麗に出ていたので、「星羅」と名付けた。
(瑠璃が選び、名を付け、可愛がっていたしな)