第29章 慈愛の時間(R18)
「流石、落馬経験豊富なだけある」
クククと笑いを咬み殺す。
けれど、これだけの打ち身で痛まない訳がない。
美弥の前では心配をかけまいと、平気な振りをしていたのだ。
「笑ったでしょ。イケズですね」
「笑ってないぞ。
お陰で他には目立った外傷もないし…。
ひどく打ち付けたのは、一部のようだな。
落馬に慣れていない美弥を見ろ、動けない程じゃないか」
立たせていた瑠璃の手を引っ張って、また自分の前に座らせると、背中から肩に優しく湯をかけてやる。
「大事なくて良かった って言ってるんだ。無茶しやがって」
チュッと首筋に口付ける。
「ンッ」
ビクッとして、耳まで一気に真っ赤になる。
(紅葉だー)
「湯、熱いか?」
ふるふると首を振る瑠璃。