第4章 光秀逗留
城へ瑠璃を連れ帰った光秀は、
女中を伴い瑠璃の部屋に入ると、
褥を用意させ瑠璃を寝かせる。
「瑠璃様、お加減でも悪くされましたか?」
心配そうに女中が光秀をみる。
「いや、久しぶりの外出で少し疲れたんだろう。
帰って来る馬上で眠ってしまっただけだ」
「さようでございますか……なら、
よろしいのですが」
光秀の言葉に心配そうにしながらも、それ以上は何も言わなかった。
「大丈夫だ、下がっていい」
光秀は女中を下がらせると、眠っている瑠璃の
噛み切れた唇を薬指の腹でそっと撫でた。
その直後、政宗が入ってくる。
「瑠璃は何で寝てんだ?
疲れて、馬上で寝るなんざぁ、
安土城のアイツくらいだろうが」
政宗は光秀の女中への対応を聞いていたのか、
怪訝そうにしながら光秀を見ると、
縁側へ腰を下ろした。
「さっき、衛兵隊が城から出て行ったのと
関係してんのか。」
「賊を河原に繋いであるから、連れて来いと言ったのだ。」
フッと笑う。
「人を売りさばいて金を得てたようだ。
女だけで無くな。
俺も捕まれば売られる処だった
クククク……」
思い出しただけでも可笑しくてならない。
「はぁ?」
「何処に売ってたのかは後から尋問
するが良い」
「んで、
河原に居た時、そいつ等が来て、始末をつけてみたら、瑠璃が気を失った。
って感じか?」
「御名答だ。
瑠璃は意識を手放す程
怖い目に遭ったのか?」
唇が切れる程強く噛み締め、手が白くなる程
拳を握りしめていた。
ただ単に怖かったのでは無いのは明らかだった。