第4章 光秀逗留
「心配はいらん」
安心させるように光秀が瑠璃の頭を撫でる。
それを聞いた男達は嘲りの笑い声をあげる。
「ギャハハハ、そんな女みたいな細っこい
身体で、俺らから逃げると思ってんのか?」
「片腹いてぇな」
「舐められたもんだなぁ〜」
「女を前に、格好つけたいだけだろ〜。
痛い目みせてやらぁ」
口々に言いたい放題だ。
「痛い目を見るのはどっちかな…」
光秀は薄ら笑いで脇差しに手をかける。
「幸いな事に、ここは俺の領地ではないから、
お前等は死なずに済むな」
クククと喉を鳴らして笑う。
「口の減らねぇヤツだな!
さっさと殺っちまえ!
女は生け捕りだぞ‼︎」
頭と呼ばれた、其れなりに威喝い男が声をあげると、子分達が一斉に向かって来る。
「キャッ」
迫り来る鋭い刃に、瑠璃は光秀にしがみついて、
顔を背ける。
怯える瑠璃を左腕で抱いたまま、刀を抜く。
鈍い刃を交わしながら、
一振りごとに1人、また1人と、的確に地に
伏せて行く。
まるで、舞でも舞っているかのように軽やかだ。
「良かったのは威勢だけだな。さ、お前が
最後だ」
と、言うと、瑠璃をその場に残し、
恐怖で向かって来ることも、
逃げる事も出来なくなっている、
頭の側まで、
あっという間に間合いを詰める光秀。
「これで、皆、生け捕り完了だ」
ニヤリと笑うと、右腕に斬り込み、
続けてみぞおち に峰を打ち込んだ。
くぐもった呻き声を残して、男はその場に
うつ伏せに倒れた。
「瑠璃、もう暫し待て」
倒れている者を引き摺り集めると、
器用に縄で縛りあげてゆく。
馬を繋いでいる木に男達を縛りつけて、
代わりに馬の手綱を引いて瑠璃の元に戻ってくる。
「瑠璃、大丈夫か?」
瑠璃はギュッと唇を噛み締め、
眉を寄せて拳を握りしめていた。
「瑠璃」
光秀の呼びかけに応えない。