第4章 光秀逗留
その手に瑠璃の白く細い指が乗せられる。
そっと握って引き上げる。
青草の匂いに混じって、フワリと石鹸の
香りが薫った。
引き上げた反動のままに、光秀は瑠璃を
胸に抱きしめる。
「み…光秀、様?」
驚いて瑠璃は光秀を見上げるが、光秀は、
瑠璃を離さず、黙って河原の土手の向こうを
見据えていた。
その、鋭い眼眸に瑠璃は言葉を続けられず、
光秀の見ている方に顔を向ける。
「瑠璃、俺に抱かれていろ」
笑う光秀の笑顔は初めてみる冷たさだった。
金色の瞳を細めて冷たく笑う光秀は
(まるで毒蛇……)
のようだった。
睨まれたら最後、絡め取られじわりじわりと
締めらつけられ、最後に毒歯で首を噛まれ、
苦しみながら死ぬ。
睨み見る方向から姿を現したのは、
小汚い武士風の輩達だった。
「頭ぁ。
今日は上玉の女でっせ〜」
「男の方も優男で、売り飛ばせそうっす」
ヒッヒヒヒと下衆な笑い声が近づいてくる。
ざっと10人程の男達に囲まれた。
瑠璃は光秀の腕の中で回りを確認する。
(どうしよう……)