第28章 鷹狩の蛇
「ご家族と離れて暮らしてるだもん、寂しいでしょ?」
「いいえ」
即答。
「政宗様のお側は楽しいですからね」
勘繰られないよう、ニッコリと優しく笑って繕う。
「そっか、政宗、優しいしね!
落ち込んでたら笑わせてくれたり、美味しいもの作って来てくれたりして、私も随分慰めてもらったなぁ〜」
美弥は一瞬も疑わないし、探りもしない。
基本で素直なのだろうな…と瑠璃は思う。
懐かしそうに美弥が話すのを聞いて、
瑠璃の心が甘酸っぱくなった。
「ふふ…美弥様も落ち込む事があるんですね」
「えー!玉瑛くん、それはないよ〜…。
結構あるんだよ?ここに来たばっかりの頃は特に」
恨めしそうな、美弥に笑いが込み上げる。
(可愛らしい、揶揄いがいのある人ね)
「冗談ですよ。美弥様。
誰にだって落ち込む事も、悩む事も悲しい事も平等にあると思ってますよ。」
目を細めて美弥を見れは、ホッとしたような、
泣きそうな顔をされた。
「玉瑛くんって、不思議…男の人とは違う感じの優しさがする」
「さあ、あまり離れないうちに、追いかけましょうか」
「うん!」
元気な返事を聞いて、スピードをあげようとした、矢先、
ヒヒヒィーーン‼︎
「きゃっっ」
「星羅⁉︎」
遥の代わりに安土での瑠璃の馬。
鼻の流星が美しく薄墨毛の、比較的大人しい性格、
「星羅」がいななき、立ち上がったかと思うと、
猛スピードで駆け出した。