第28章 鷹狩の蛇
「……くん、玉瑛くんっ。…これ、何処で買ったの?」
美弥の呼ぶ声が近くなって我に帰る。
「あ、ごめんなさい。
これ、特注です。
瑠璃様の着物を仕立てた残りで、掌の方は鹿革で作ってくれるよう、呉服屋にお願いしたものです」
「へぇ〜、オーダーメイドなんだぁ。
でも、なんで掌は鹿革なの?」
美弥は手に取っている瑠璃の手ごと、
手袋を裏表ひっくり返して見始める。
(この人、オーダーメイド って言った)
瑠璃は表情は崩さないまま、美弥を不可思議な思いで見る。
「手綱を握るので、布ではすぐに擦り切れてしまうんですよ。ですから、鹿でなくても革の方がいいんですよ」
平静を装って、した説明を美弥は感心しながら聞いている。
「ふーん、そっか、耐久性が必要って事だね。
可愛いし、女性用の乗馬手袋として流行らないかなぁ〜」
「美弥様……。残念ながら、この時代、
女性が1人で馬に乗ることは、野蛮なことなんです」
「えーーっ!あり得ないっ。男尊女卑‼︎
乗馬は貴族の嗜みなのに〜っ」
「まぁ、それは、外国の話ですからね…」
(あ…)
つい口が滑ってしまったが、美弥は瑠璃の言葉を気にも留めず、1人プンスカ怒っている。