第4章 光秀逗留
「石鹸は使ったらなくなっちゃうけど、
ケー……容れ物が付いてたから、手元に残るな。良かった」
にっこりと笑った瑠璃に光秀は
心が温かくなるのを感じた。
「本当にもういいんだな?」
「はい」
「では、行くか」
光秀は瑠璃を馬上に押し上げ、
瑠璃の背後に跨った。
「しかし、瑠璃。そんな安物で良かったのか?」
「安物?袴の事ですか?」
「そうだ。出来合いの物じゃないか」
「安いなんて事ないですよ。でも、
これ位で良いんです。
汚れても気にしなくていいでしょ?」
腕の中から優しい瞳で瑠璃に見上げられる。
それに釣られてどうでも良いような質問を
続ける。
「袴なんてどうする」
「着物で馬に乗るのは大変ですから……。
こうやって、横座りで乗せて貰うのも悪くないですが、安定感に不安があります。」
この言葉から瑠璃は乗馬の経験がある事が
伺えて、光秀は胸中で驚いた。
(武士の子でもない女が馬にのるとは、
この女に興味が尽きん。
敵なら、心から身包み剥ぎ取って中を見てみたいものだ…)
クッ と妖しげな笑みを湛え、瞬息の間に消した。
「馬に乗る為に買ったのか。
では、また 連れ出してやろう」
光秀の言葉に、瑠璃が小さく頷いた。