第26章 弓馬競技会
意地悪に自分を見た信長に、瑠璃は全くの無反応だった。
眉ひとつ、瞳すら揺らさなかった。
「鷹狩では動く物を射れねば意味がない。
故に、最後は上位者に射駆けをしてもらう。
準備をしろ!」
信長の言葉にどよめきが起こり、青い顔をする男達を他所に、
黙ったまま胡散臭そうに、今度は瑠璃が信長を見ていた。
信長の命で急遽、射駆けの用意が始まる。
直線馬場が準備されるさなか、
「おい、家康。お前が仕組んだのか?」
政宗が小声で家康に問う。
「まさか。
もしかしたら…と思っただけで、
やって下さい なんて言いませんよ」
家康がボソっと答える。
(信長様のことだから、もしかしたら…と
思って練習させたけど、まさか本当になるとは)
「なんにしろ、お前には感謝しないと、だな」
「多分、瑠璃の独り勝ちですよ」
自信ありげに言う家康に、政宗が目を丸くした。