第4章 光秀逗留
「なんでもねだれ と言ったろう」
残念そうな顔の瑠璃に光秀は当然のように言う。が、
「んー。
光秀様には他の物を買って頂こうと思ってたの……」
んーと唇に人差し指を当てて、
考える様に宙を見る瑠璃。
そんな瑠璃を上から見下ろしながら
「んー じゃなくて、買って下さい、光秀様
だろ?
ほら、ねだってみろ」
と唇が触れそうな程近くで、光秀が微笑む。
(どう出る?瑠璃)
「………… ……だ…め…っ……」
しばらくの間があって、頬を真っ赤に染めた瑠璃が、光秀の胸を押し返す。
そして、下を向く。
見れば、首筋まで真っ赤になっている。
(……なっ?)
そんなオドオドした瑠璃など想像してなかった。
いつものように、難なくスルリとあしらってくると思っていた光秀は、子供を虐めた気分になって、嘖(さいな)まれた。
居たたまれないで、空を見上げていると、
恥ずかしそうに、俯き、光秀の胸に額を押し付けた瑠璃が、
着物を握り締めて、小さな声で
「……光秀、様……かっ…て?」
と言って、まだ、桃色に染まったままの顔で光秀を見上げてくる。
言え と言ったことを光秀は後悔した。
「お前は一体、何ものなんだ……」
ガックリ肩を落とす光秀なのだった。
「主人、他に目新しい物は無いのか?」
気を取り直そうと、光秀は主人に聞いた。
「お侍様でしたら、こんな物はどうでしょう」
と取り出し見せられたのは、両手程の銃。
「玩具みたいだな」
しげしげと観察する。
「重みは玩具では無さそうだが…」
「子供の玩具だと思われて、何処でも買われず、
こんな北の方まで流れてきたようです。
私も使えるのかどうか、正直わからないのです」
光秀と舶来店の主人が顔を突き合わせ銃をみていると、
ヒョッコリと瑠璃が口を挟んできた。