第26章 弓馬競技会
「アイツらっっ」
秀吉が踏み出す。
「放っておけ」
政宗が秀吉の肩を掴んで制止する。
「今 行くのは得策じゃない」
「しかし、明らかに妨害してるっ」
「今行けば、玉瑛が不利だ」
「そうですよ、秀吉さん」
家康も横から口を挟む。
「家康、お前まで」
「俺達に贔屓されてる って他の者が思えば、
嫌がらせは顕著になるでしょう」
自分も、腹立っている事を隠して、家康が秀吉を静かに諭す。
「下層のヤツらなんてそんなもんだろ。蹴落としてなんぼだ。それで潰れるなら玉瑛もそれまでってことだ」
温情も何もない傍観するような政宗。
「政宗っ、はくー…」
薄情だ と言いかけた秀吉は、言葉を飲み込んだ。
「……お前、そんなにも、自信を持ってアイツを信じるんだな」
「当たり前だろ。俺が選んで連れて歩いてるんだ。主の俺が一番信じてやるべきだろ」
強い思い、不安など無い口調。
「あいつはあんな嫌がらせで崩れやしねぇ。
それどころか、もっと強くなるぜ」
楽しそうに面白い事が始まる前のように笑う政宗。
(本気で怒った処、見せてくれよ)
秀吉は政宗の言うことに耳を傾けながらも、
半信半疑で射場の後方に立つ瑠璃を見た。