第4章 光秀逗留
瑠璃が光秀の為に着物を着替えているのを見た時、
光秀を引き立てるように対称的な色の着物を着た瑠璃を見た時、
それを、瑠璃が光秀の為に選んだんだと思うと
何だか苛立った。
光秀になのか、瑠璃になのかは判らない。
小声で光秀に話かける瑠璃にもだが、
瑠璃に接している光秀の見た事のない
柔和な態度に、更に心がざわついた。
光秀が瑠璃の頬を撫でるのを見た瞬間、
目を瞑りたくなった。
(触れさせたくない……そんな感情?)
政宗自身も戸惑っていた。
確かに感じたそんな気持ち初めてだった。
政宗とは対照的に光秀は上機嫌だった。
(色恋沙汰には奔放で執着心など見せた事のないヤツがな)
政宗本人も解らない苛立ちの名前に光秀は気付いている。
(女に執着していると言うより、自分の物を
取られた子供みたいだが……)
そう考えると、可笑しくて堪らない。
「光秀様は今日は機嫌がよろしいのね」
と何も知らない瑠璃が言う。
「あぁ、すこぶる イイぞ。
そうだな、なんでも、ねだってみろ」
「何でも言う事聞いてくださるの?」
「俺を困らせようとでも考えてるのか?」
「そうですねー。
隠れん坊 でも致しましょうか」
ウフフと口元に手を当てて、ほくそ笑んで見せる。
「あー、それは、城外では止めてくれ……。
本当に隠れん坊になったら、洒落にならん」
本当に困った顔になる光秀。
この時代、連れ去られ、身包み剥がされたり、
強姦され売り飛ばされる、殺されるということはよくあることだった。
そんな、冗談を言い合いつつ、馬に揺られれば
間もなく城下町に着いた。