第24章 家康の特訓
弓束(ゆづか)を握った手に力を込める。
それに気付いた政宗が目を眇め笑っていた。
(出たな、負けず嫌い)
弓を握っても矢をつがえても、怖くはなかった。
少し震えたけれど、精神統一すれば振り払うことが出来る程度で、瑠璃は安堵していた。
「弓の腕は判りました。次は馬場に行きましょう」
御殿裏手の馬場に出ると、家康が馬を一頭引いて来る。
「この馬、乗りこなして。名は白石」
目を合わせたく無さそうな家康と目を合わせながら、瑠璃は手綱を受け取る。
(この馬、多分、いや絶対…)
瑠璃は黙って馬を引いて馬場に入ったが、すぐには馬に乗らない。
家康の横で成り行きを見守っている政宗が、
小声で話しかける。
「おい、あの馬、お前の馬だろう」
家康の馬。
政宗が言わんとする事は、扱いが難しい馬だと言うこと。