第23章 政宗の小姓2
実際、矢が刺さったくらいで、瞬時に絶命するわけではない。
息の根を止めたのは政宗だ。
「お前は殺してない。殺したのは俺だ。
だから罪悪感を持つ必要も、泣く必要も無い」
「でも…殺させた」
涙が溢れる。
「戦でのことだ。死ぬか生きるか背中合わせの場所で、弱い者は死ぬ」
瑠璃が悲しそうな目で政宗を見る。
「死なない為に闘い、殺すんだ。
強くある為に、大切なモノを守り、生きて行く為に」
そう言って、政宗は瑠璃を抱きしめる。
「生きてるからこうやって出来るんだろ。
あの時、お前が矢を放ってなかったら、
死んでたかもしれない。
俺が今、生きて、こうして居られるのはお前のお陰だ」
瑠璃の耳に政宗の鼓動が響き、
またゆっくりと声が降ってくる。
「瑠璃が俺を救った。……俺の女神…」
瑠璃は、政宗の腕の中で、鼓動と声を聞きながら考える。