第3章 初夏の訪問者
2人を探し回ったことなどおくびにも出さず、
悠然と2人の元に歩いて行く。
近づくに連れて、2人の雰囲気が良いのを
感じた。
(光秀が穏やかな様子で酒を飲むとは……)
隠してはいるが参謀や、間者を担う光秀は
裏を読む事に慣れすぎて、気を休められない
性分になってしまっている。
(人は疑ってかかる……)
そんな光秀が気を許した様に、
瑠璃から酒を注がれ、飲んでいる。
それも、対面して間も無い時間で。
(光秀……)
政宗になんとなく、得体の知れない
感情が湧いた。
渡りを通ってこちらに来る政宗を視界に
入れた瑠璃が、
笑顔で政宗を迎えた。
「政宗、お帰りなさいませ」
「あぁ、いい子にしてたか?」
その問いに光秀が答える
「俺と一緒にいい子に待ってたぞ。
なかなか退屈しない、いい女だな、政宗」
そう言って笑う光秀に、
うんざりした様子で政宗が言う。
「光秀、来るなら先に馬を寄越せ。急いで
帰ってくるこっちの事も考えろよ」
「いつもの事じゃないか」
「いつもの事だから言ってるんだ」
瑠璃が笑っている。
「瑠璃、なんで笑うんだ。俺が困ってるのが面白いか?」
「だって、そんなウンザリ、迷惑そうな政宗、
そうそう見られないもの」
「いいもの見たー」
と、何時になく上機嫌な瑠璃。
瑠璃のそんな表情に、政宗は不機嫌にもなれなかった。