第22章 政宗の小姓(R18)
すれ違いざまに棘のある言葉を投げられたり、
睨まれたり、親族間での確執。
思い出すのは現代、瑠璃の家の親族間での諍いだった。
感じる冷たい視線。
口を噤んで腹の中に隠している者や、隠れてコソコソと陰口を言う者。そう言った輩の方が恐ろしい事を瑠璃は知っている。
垣屋のように正面から悪口を言い、分かり易く罵りけなして来る方がはるかにマシだった。
そんな事があって数日後のこと、
「三成、悪かったな」
「何がでしょう」
「ここんとこ、俺の代わりに玉瑛を見てもらってたからな。仕事、滞らなかったか?」
政宗の言葉に、三成が目をパチクリさせる。
「何を仰いますか。滞るどころかはかどりました。流石、瑠璃様です。
ですが、少々 心配はあります」
三成の顏が憂う。
減るどころか多くなる陰口や、正面切っての悪口の数々。
「いくら男性の格好をしていても、瑠璃様は女性です。聞くに堪えないでしょう」
「やっかみ、か……」
「心が折れなければよろしいのですが…」
三成は頻りに憂色を示す。
「口さがなく、冷罵する者が増えれば、それに便乗して事が大きくなる可能性もあります。そうなれば、直接、身に危険が及ぶかもしれませんね…」
「わかった、気付ける」
まさか瑠璃が、やっかみの陰口如きで心が折れたりはしないと思った政宗だったが、
三成に「身の危険」そう示唆されて表情を引き締めた。